介護報酬改正!施設運営における3つの実務チェックポイント

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2024年の介護保険改正では大きい変更点がいくつかありました。
近年、人員不足が深刻化する中で、介護職員がより安心して働ける環境を整えることが課題となっており、今回の改定ではその点が強く意識されています。

一方で、介護施設運営にとっても大きな影響が及びます。
ここでポイントを押さえておかないと、報酬減・加算の取りこぼし等の運営リスクにつながる恐れがあります。

今回は分かりやすく施設運営側からの目線で『3つの実務チェックポイント』を解説していきます。

チェックポイント①:介護報酬改定への対応

今回、介護職員の処遇改善分と介護報酬の基本部分を含めた全体的な改定率が「1.59%」の引き上げとなりました。
また、その他改定分での引き上げも「0.45%」も見込まれており、合計すると「2.04%」の大幅な改定となります。これはここ数年では最大級の変更と言えるでしょう。

この改定で、施設運営側は何を意識すべきなのでしょうか。
2024年の改定では、これまで別々に算定していた「介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つが、「介護職員等処遇改善加算」として一本化され、整理・簡素化されました。

新しい加算は、賃金改善や勤務条件の要件に応じてI~IVの4区分が設けられており、施設としてどの加算を取得するかの判断がしやすくなっています。

サービス類型ごとの加算率一覧

サービス
区分
(夜間対
応型)訪
問介護、
定期巡回
(予防)
訪問入浴
介護
(地密)
通所介護
(予防)
通所リハ
ビリテー
ション
(地密)
(予防)
特定施設
入居者生
活介護
(予防)
認知症対
応型通所
介護
(看護)
(予防)
小規模多
機能型居
宅介護
(予防)
認知症対
応型共同
生活介護
(地密)
介護福祉
施 設 、
(予防)
短期入所
生活介護
介護保健
施 設 、
(予防)
短期入所
療養介護
(老健)
介護医療
院、(予
防)短期
入所療養
介護(老
健以外)
新加算Ⅰ24.5%10.0%9.2%8.6%12.8%18.1%14.9%18.6%14.0%7.5%5.1%
新加算Ⅱ22.4%9.4%9.0%8.3%12.2%17.4%14.6%17.8%13.6%7.1%4.7%
新加算Ⅲ18.2%7.9%8.0%6.6%11.0%15.0%13.4%15.5%11.3%5.4%3.6%
新加算Ⅳ14.5%6.3%6.4%5.3%8.8%12.2%10.6%12.5%9.0%4.4%2.9%

参照:厚生労働省:一本化リーフレット

施設運営側の気を付けるべきポイント!

加算取得の条件整理・体制整備が必要です。
整理・簡素化はされましたが、どの区分を取得するかは職員配置やキャリアパス制度の整備次第です。

あいまいに取得できる加算ではなく「長期的に人材確保につながる加算区分」を狙うことが非常に重要です。

小規模施設では研修制度やキャリアパスが未整備の場合もあります。
その場合は、就業規則や賃金規程の見直し・研修制度や資格取得支援の導入が加算取得のカギになります。

さらに、職員への配分ルールを透明化・明確化し、給与明細に反映させることで職員の納得感とモチベーション向上につながります。

具体策

  • 就業規則や賃金規程の見直し
  • キャリアパス要件の整備(研修・資格取得支援など)
  • 職員への配分ルールを透明化・明確化し、給与明細に反映させる

チェックポイント②:加算算定のための実務管理

加算取得の条件は明確ですが、正確な記録・報告ができていなければ加算は認められない、もしくは返還を求められる。という事が発生してしまいます。

施設運営側はリスク回避と効率化の為に、制度理解・記録管理・体制整備をセットで対策していく必要があります。

施設運営側の気を付けるポイント!

今後は、正確な記録・報告体制の整備が不可欠となってきます。
提出期限を過ぎてしまったり、算定要件に不備が生じると加算が認められない場合があります。
担当者だけで管理するのではなく、上長や事務スタッフと連携しダブルチェックを行うように体制を整えましょう。

ICTを活用した勤務表・研修記録の管理も有効です。
介護記録ソフトや勤怠管理システムなどを導入し、勤務表や研修記録を一元管理することで、転記作業の負担を減らすことができ、職員が現場業務に集中できるようになります。

こうした体制を整えることで、記録ミスによる加算取りこぼしや返還リスクを防ぎ、安定した経営につなげることが可能になります。

具体策

  • LIFEデータ提出の期日管理と担当者のダブルチェック体制
  • 勤務表・研修記録をタブレットやクラウドで一元管理
  • 実地指導時に備えた記録・報告の確認フローの整備

チェックポイント③:職員への還元とモチベーション管理

現在、人材不足が深刻→離職率が高くなるという悪循環に陥っています。

「処遇改善加算」は、深刻な人材不足を解消し、介護職員の賃金改善と離職防止を目的として設けられました。施設の利益確保ではなく、「職員にしっかり還元されているか」 が最も重要なポイントです。

厚生労働省も実地指導で 「還元方法の明確化」 を厳しく確認しています。職員のモチベーションが上がれば、サービスの質も向上し、結果的に利用者や家族の満足度アップにもつながります。

施設運営側の気を付けるポイント!

処遇改善加算は「職員に還元すること」が前提です。
施設が利益を上げるだけでなく、職員への給与や待遇改善にしっかり反映させることが、離職防止・人材定着のカギとなります。

もちろん給与だけではありません。資格取得支援や研修機会の充実、柔軟なシフト調整有給取得率の改善も還元として反映させることがとても重要な還元策です。
そして、昇給や賞与の基準を明確化・可視化することで、職員の納得感を高められます。

さらに、LIFEデータを活用して転倒率低下や口腔ケア改善などの取り組みを行えば、利用者への安全・安心も向上し、利用者との信頼関係を築く事ができます。質の高いケアを提供することでやりがいを感じ、それがモチベーション向上につながるのです。

具体策

  • 給与だけでなく資格取得や研修制度、シフト調整の改善も還元策に含める
  • 昇給・賞与の基準を明確化・可視化し、職員の納得感を向上させる
  • LIFEデータを活用し、質の高いケアを提供することで職員のやりがいを創出する

まとめ

2024年の介護報酬改定は単なる報酬アップではなく、施設運営の質そのものを問う改定です

• 加算取得に向けた体制整備
• 記録・報告の徹底
• 職員への還元とサービスの質向上

この3つを実務レベルで確実に実行することが、安定した経営と人材確保につながります。
今回の改定をチャンスと捉え、持続可能な施設運営を目指しましょう。

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